【履物豆知識】雪駄はいかにできるのか? 竹皮表を編む

挿げ職人の小林です。
梅雨の前から暑い日が続きますね。
体調を崩さないように皆さんお気をつけください。

雪駄を編む職人の物語

さて、先日「畳表(たたみおもて)雪駄の材料とは?」にて、ご紹介しました材料「”竹皮”採取の稀少性について」に引き続き、竹皮表職人のストーリーをご紹介します。

“竹皮”材料に関してはコチラを是非ご覧ください♪👇
https://getaya.jp/knowledge/takekawaomote/

たくさんの苦労をかけて、採取された竹皮。
集められた竹皮は、その後、数日天日干しをされたのち木製の小屋へと入れられ、カビや虫の付着を防ぐため”薫蒸”処理が行われます。
その後、再び斑点の少ないものを選ぶ選別が為された後、編みの職人の手へと渡ります。

編みの職人の手へと渡った竹皮は、一つの製品の中に色ムラを出さず均一に揃えるため、竹皮をその色合いでさらに選別していきます。
一見同じに見える竹皮の微妙な色合いを判別するため、職人の目が重要な工程です。

そして、色を揃えた竹皮をぬるま湯に一晩漬けて寝かせた後、等間隔に釘を並べた「皮裂き器」を使い均一に裁断していきます。
含んだ水分が多ければ柔らか過ぎて均一に裂けず、水分が足らなければ繊維を壊してしまい、製品の足触りへと影響が出てしまいます。
適量の水分をはかる職人の経験が必要な工程です。

雪駄職人の技術

均一に裂かれた竹皮は、いよいよ編みの工程へ。
職人の技術が特に問われる工程です。
均一に編むために、職人の目、手加減、スピードが要求され、職人の技術力が問われます。
覚えて1~2年の職人は1日1足から1足半くらいしか編めないそうです。ベテランになると1日6足くらいになり、編む工程だけで一足あたり60分くらい。竹皮の裁断なども含めると75~80分だそうです。

因みに、草履1足あたりの竹皮の本数は、編み手の技術や草履の等級(品質)にもよりますが、低品質なもので60~70本くらい。高品質になると130~200くらいまでとばらつきがあるそうです。
上手な編み手は少ない本数で均一に重ねて仕上がりをきれいに見せるので作業が早いそうです。慣れない編み手ほど、力が入って均一にならず、本数が増えるので時間がかかり、草履本体も硬くなって仕上がったものが扱いにくくなるそうです。

美しく履きやすい一足へ

さて、職人の手技で編み上がった竹皮表。
さらに、その美しさを仕上げる工程へ。
編み上がった竹皮表を乾燥させた後、金型(雌型)に入れ、油圧プレス機で圧縮します。
この作業により、草履は硬く引き締まり、均一な見た目の美しさ、そして履きやすい質感へと変化します。
金型へと挟みこむ鉄板はガスで熱しますので、作業は常に高温の室内で行われます。
鉄板の温度も、熟練の職人が肌で感じ、その日の気温・湿度に合わせて微妙な調整が求められる工程です。

全国に数人しかいない職人

こうしてやっと仕上がった竹皮表。
ここから更に、その表を使った雪駄や草履へと仕立てるために、また別の職人へとバトンが渡ります。

竹皮表を編む技術を持つ職人は、全国に数人しかいません。
歌舞伎、相撲、各地の祭り、といった受け継がれる日本の伝統芸能・伝統文化の衣装にも使われる竹皮表や稲藁表。
この表を製作できる貴重な技術職であり、かつては、何百軒とあったこの表を扱う職方や職人も、現在ではこれだけ少なくなってしまっているのです。

辻屋本店でも、雪駄はもちろんの事、女性の草履、カジュアルなラジアル底の草履など、貴重な竹皮表を使った製品を様々展開しております。
皆さんに少しでもこういった竹皮表に触れる機会を持って頂き、この美しい伝統工芸が、この先の未来へも繫がっていくようにと願っています。

竹皮表雪駄の鼻緒をこの道60年の熟練職人が挿げる

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