民俗芸能が繋いでくれた福島・浪江町とのご縁

四代目店主 富田里枝です。
あの日から明日で10年。

東日本大震災の翌年、2012年2月半ば、60歳前後の女性がうちの店に入ってきて
「踊りで使う下駄が欲しいんです」とおっしゃいました。
詳しく話を聞いたところ、福島県の浪江町請戸地区の伝統芸能「請戸の田植踊」で踊り手の子ども達が履く下駄を探していたのでした。

履物屋だからできること

「請戸の田植踊」は江戸末期から地元神社の安波(あんば)祭で、豊作や豊漁を願い奉納されてきた伝統ある民俗芸能です。

津波と原発事故で浪江町は甚大な被害を受け、住民たちは散り散りになって避難先で暮らしていました。
女性の名前は佐々木繁子さん。
当時、東京・江戸川区の東雲団地に避難されていました。
佐々木さんは江戸時代から続く「田植踊」をようやく復活させたところで、避難所の屋外で踊る際に下駄が必要だったのです。

被災された方々には比べようもありませんが、現在のコロナ禍と同じくらい当時うちの商売も苦しく、先の見えない毎日でした。

でも、メディアで報道される被災地の過酷な状況を見て、何かお役に立てることはないか考えていたところでした。

そこへ現れた佐々木さん。
履物屋として協力できることはまさにこれだ!ということで、赤い鼻緒を挿げた子供用の白木駒下駄を十数足、進呈させていただきました。
下駄を受け取ってくれた子ども達から御礼の手紙が届き、ホッと胸をなでおろしたものです。

その時のブログはこちら
https://getaya.exblog.jp/15438278/
https://getaya.exblog.jp/15499269/

明治神宮での奉納

その年の7月末、明治神宮にて『明治天皇百年祭』が開催され、東日本大震災で甚大な被害をこうむった岩手県、宮城県、福島県から7団体が参加し、各地の郷土芸能が奉納されました。
「請戸の田植踊」の皆さんも参加するというので、私たちも見に行きました。

本来は2月のお祭りなので衣裳は冬用。
花笠までかぶって本当に暑そうなのに一所懸命踊っている子ども達。
足元にはうちの下駄を履いてくれていて、胸が熱くなりました。

その時のブログがこちら。
https://getaya.exblog.jp/16518505/

ひょんな出会いから浪江町の皆さんとご縁ができ、子ども達のお礼の言葉や踊る姿に、たくさん元気をいただきました。

この10年、佐々木さんは「田植踊」を守るために奔走し、復興公演を続けてきました。
子ども達も公演のたびに友達に会えるのを楽しみに参加してくれたそうです。

祭りと芸能を守りたい

祭りや芸能がどれほど大切なものか、浅草にいる私たちには痛いほどわかります。

神社跡地で行われてきた祭りは今年はコロナで神事のみとなり、踊りは奉納されなかったそうですが、NPO「民俗芸能を継承するふくしまの会」が動画を配信しています。

請戸芸能保存会の場面で佐々木さんのインタビューと踊りがご覧になれます。
辻屋本店との出会いについても語って下さっているので、ぜひご覧ください。

「ふくしま民族芸能ちゃんねる」
https://www.youtube.com/watch?v=PZRgbGL7spU&list=UUsZT11_xFBhC3LeuZETz-1A


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