着物は全身のバランスが大事

四代目店主、富田里枝です。
7/14のブログでご紹介したお客さまが雑誌『クロワッサン』の「着物の時間」という企画ページに登場されました!
仕覆作家の山田英幸さん。
ブログ記事はこちら→ https://getaya.jp/blog/20210714/

仕覆とは、茶道で使う茶入や茶碗などの道具類を入れる”袋”のこと。
中身に合わせて布や紐と吟味した美しいものをしつらえる習わしで、茶会で仕覆の鑑賞は楽しみのひとつでもあります。

山田さんは茶道具にとらわれず、グラスやティーカップなどの仕覆を発表し、先月は東京の松屋銀座デパートのギャラリーで、ファッションデザイナーの横森美奈子さんと一緒に作品展を開催されました。

浦野理一の布に出会って

もともとおしゃれな山田さんですが、着物は浦野理一(昭和を代表する染織作家)の布に出会ってから目覚めたとのこと。
アンティーク着物のお店でこつこつ集めた浦野理一の着物を、仕立て直して着ているそうです。
辻屋本店に持ち込まれたのも浦野の端切れを仕立てた鼻緒。
からす表の雪駄に挿げました。

こちらのページで山田さんがコーディネートしているのも、すべて浦野理一。
淡いベージュ地に赤の十字絣の経節紬は横森美奈子さんから譲り受けた着物。
帯は黒無地の経節紬。
男性の着物って、とかく紺・茶などオーソドックスな色か、反対に奇抜な色か、両極端に振れがちなのですが、山田さんの着こなしは洗練されていながら、ちょっととんがった部分があるのです。
品質の良さ、素材選びが大切である、というお手本。

小津安二郎監督の作品に

浦野理一といえば、小津安二郎監督の多くの映画で衣裳を担当したことで知られています。
小津監督にとって初めてのカラー映画『彼岸花』からクレジットに「浦野繊維染色研究部」と出てきます。
「文人好み」と言われた浦野理一の着物は、大佛次郎、前田青邨、小倉遊亀、里見 弴など鎌倉文化人たちに好まれていたそうです。
『幸田文全集』の表紙には浦野理一の手織り木綿が用いられ「幸田格子」と命名されたとか。

中野翠さんの『小津ごのみ』というエッセイの中で、中野さんならではの鋭い観察と分析が綴られていて、たいへんおもしろい。
「クラシックのようでもありモダンのようでもあり、地味のようでもあり派手なようでもあり。」
「実際、半世紀近く経った今、『彼岸花』以後の小津映画を見ると、洋服姿よりきもの姿のほうが断然モダンに見えるのだ。」
「小津安二郎にしても浦野理一にしても、古いものの中に「古くならない新しいもの」を見つけ出す達人だったのだと思う。」

日本人のファッションが着物より洋服の方が多くなっていくこの時代において、無地、縞、格子などグラフィックデザイン的な浦野理一の着物が、画面に理知的な印象を与えているというのです。

意外と気付かない全体のバランス

山田さんご自身も浦野理一と着物の着こなしについて書かれています。
「全体の色合わせ、色と柄の大きなバランス、そして質感の対比…それこそが小津映画の、そして浦野理一の着物のポイントなんです。」

山田さんのブログ→ https://mansionlibrary.jp/contents/9969

たしかに着物に凝り出すと、季節に合う柄や色だったり、帯締や帯留などの小物に目が行くようになりがち。
至近距離なんですよね。
私自身、着付けを完了すると姿見でチェックはするのですが、全身の写真を撮ってもらうと「あれ!遠目で見るとこんな感じなんだ!」とあらためて気づくことがあります。
全身のバランスって、意外と自分ではわからない。

他の人から見ると、草履は目立つ!

そして足元も。
「どうせ履物なんて気にする人いないでしょ」とおっしゃる方も多いのですが、自分自身ではちょっとしか見えなくても、他の人から見ると履物はかなり目立つものなんです。
着物や帯が上等なのに、どうでもいい草履を履いていると逆に足元は目立ってしまいますよ~

履物専門店としては、絹や麻、木綿などの自然素材の着物には、ウレタンやEVAの草履などではなく、コルク芯の草履や畳表の草履、桐下駄など自然素材の履物を合わせたほうがサマになるのになぁと思います。
ウレタンやEVA素材の草履は、立ち姿の側面が残念な見栄えになるのです。
せっかく頑張った着物コーディネート、足元まで気を抜かないでくださいね♪

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