【履物豆知識/男性】革雪駄のバリエーション

男性の和装人が凝る、革雪駄の素材とは?

男物の革雪駄は、女性の草履のように形のデザインに種類がない分、革のバリエーションは豊富です。
辻屋本店は、ちょっと変わった雪駄を探しに来る男性のお客さまが昔から多いので、定番の「ヘビ」や「トカゲ」のほか、珍しい革雪駄も取り揃えております。
今回は、そのバリエーションをご紹介します。

目次

ヘビ革(パイソンレザー)
トカゲ革(リザード)
エイ革(ガルーシャ・スティングレイ)
オーストリッチ革(ダチョウ)
ワニ革(クロコダイルレザー)
アザラシ革(シールスキン)
ゾウ革(エレファント)
カバ革(ヒポポタマス)
鮫革(シャークスキン)

ヘビ革(パイソンレザー)

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ヘビ革は、素材の薄さから繊細なものと思われがちですが、革製品のために加工を施した後は、丈夫で鱗が剥がれてしまうということは殆ど無く、緩やかに色合いの経年変化を楽しむことができます。
印象が強いので好みは分かれますが、根強い人気がある革のひとつです。

辻屋本店では、雪駄や鼻緒に主にダイヤモンドパイソンレザー(アミメニシキヘビ)を使用しております。
ちなみに、映画の中であの「寅さん」が履く雪駄は、畳表の雪駄にヘビ革の鼻緒だそうです。

トカゲ革(リザード)

リザード革に使われるトカゲは、数十センチから1mを超える大型のトカゲが使われます。雪駄に使われる主なリザード革の種類は以下のようなものがあります。

ミズオオトカゲ(リングマークトカゲ)

ミズオオトカゲは個体によっては体長が2mほどにもなる大型のトカゲで、別名のとおり丸い輪紋が並んでいるのが特徴です。リザード革の中では最も高級な種類の1つで、様々な革製品で使われています。
その輪紋の美しさに価値がありますが、自然界で育つリザードは、模様が薄かったり傷がつくことも多くあり、綺麗な輪紋が入る革は大変貴重です。
雪駄に使用する場合は、輪紋のサイズも美しさに関わるため、数十センチほどの個体が使われることが多いです。

ナイルオオトカゲ

リングマークトカゲと同様に大型になるトカゲで、こちらも汎用性が高く、さまざまな革製品に使われています。ウロコの模様はミズオオトカゲと似ている一方、目立つ丸い斑紋がないため染色加工されることが多いです。

エイ革(ガルーシャ・スティングレイ)

ガルーシャとはアカエイの革、英語表記ではスティングレイとも呼ばれます。

製作する職人を手こずらせるほど硬く(雪駄の場合、巻き込み部分などを削るのですが、研削する工具の刃が傷んでしまうほどです)、100年もつと言われる頑丈さは類い稀です。その丈夫さとファッション性の高さから、中世ヨーロッパでは剣の鞘などに使われていました。フランスの国王ルイ15世が自身と側近の道具を作らせていた職人の名が「ジャン・クロード・ガルーシャ」。
エイ革の職人の代表的人物「ガルーシャ」の名は、そのままエイ革の呼称にも使われるようになったそうです。
日本でも武具の材料として、丈夫さと美しさを兼ね備えたエイ革は古くから愛されてきました。、鎧の内側に着用するものや、日本刀の柄や鞘の部分などにも使用されています。

ガルーシャの雪駄の中心には”スターマーク”と呼ばれる斑点状の第三の目(光を感知する器官)があります。
天眼や神の目とも呼ばれていて、一体につき一つしかない幸運を招くシンボルとも言われています。
「海の宝石」とも呼ばれ、輝きを放つ美しさは唯一無二の品です。

ちなみに、余談ですが…このガルーシャ(エイ革)の雪駄、入荷するとホントにすぐに売れてしまうので店頭に並んでいることは稀。
右から左へと売れていく為、実はお店の人もあまりじっくり見る機会がないとも…
購入ご希望の方は、こまめにショップをチェックいただくか、御注文のお問合せを頂けると確実です。

オーストリッチ革(ダチョウ)

オーストリッチ
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エキゾチックレザーを代表する革の一つオーストリッチ(ダチョウ革)です。
地上最大の鳥類ダチョウの特徴はその体表の約40%にのみ存在するクイルマークと呼ばれるつぶつぶの羽軸跡で、他の動物革には無い独特な表情をしています。
クイルマークの出方の良し悪しにより、革の質の良さが左右されます。

また、辻屋本店ではオーストリッチの脚部の革(レッグ革)を使用した雪駄も、時々入荷いたします。小さい素材の革ですので、主に切り継ぎ(パッチワーク)加工された雪駄でご用意しております。
部分により独特な表情を見せる革の組み合わせのデザインは秀逸です。

ワニ革(クロコダイルレザー)

エキゾチックレザーの代表格、ワニ革です。
最高級の皮革素材として世界中で愛されるワニ革。

ワニ革は高価な価格で取引されますので、養殖事業が成り立ち、現在ではワニ革の約9割ぐらいが養殖で、野生のワニの取り扱いは非常に少ないのが現状です。

ワニ革は大きく「クロコダイル・アリゲーター・カイマン」の3種類に分類されますが、現在、辻屋本店で主に雪駄に仕立てられるのはクロコダイルレザーの「肚(ハラ)ワニ」です。

因みに、ワニを背中から割き、腹の部分を使用する「肚(ハラ)ワニ」逆に腹から割き背のゴツゴツした部分を使用する「背(セ)ワニ」の2タイプが皮革として使われます。

そんなワニ革の雪駄ですが、前述の通り世界中で引く手 数多な高級革のため、なかなか入荷が珍しい雪駄の一つです。程よく良い状態の革が手に入った時に仕立てるのですが、それでも20万円はなかなか下らないという代物です。

値が張っても良い革で誂えたいということであれば、お誂えも承りできますので是非ご相談ください。

ワニ革といえば、かつて昭和の頃、その独特な「コブ」に存在感がある「背ワニ」が雪駄、草履の材料としてよく利用されていましたが昨今ではなかなか少ないですね。

アザラシ革(シールスキン)

かわいいアザラシやアシカも、国や地域によっては害獣として駆除される対象になっていて、その副産物としてシールスキンが作られるということがあります。

養殖されているの動物の皮とは違い、アザラシやアシカ、オットセイは野生のものを捕獲するため、流通量も少なく、希少性が高いのが特徴です。

厳しい寒さの海で暮らし、胴体で這うようにして移動するので、その皮は非常に分厚くて頑丈。ゆえに、シールスキンは強度が高く摩耗にも強い革素材です。
革の表情としては、独特の波のような畝(ウネ)模様があるのが特徴です。

尚、アザラシやアシカ、オットセイの毛皮を使った製品がありますが、こういった毛皮はシールスキンとは呼びません。
毛を除去してなめし加工を施した状態の革をシールスキンと呼びます。

ゾウ革(エレファント)

エキゾチックレザーの中でも特に輸出入の規制が厳しく希少価値の高い素材です。ゾウのイメージ通り丈夫さが特長で、摩擦に強く耐久性に優れています。
しなやかなコシのある質感と独特の手触りが魅力的です。
部分により起毛感がありますが、次第に落ち着きツヤが出て経年変化を楽しめます。

エレファントレザーの国際取引について

アフリカ・ジンバブエ及び南アフリカの国立公園局の下において増えすぎた個体等を生態保護のために捕獲したものなどが素材として用いられます。また、収益の一部はアフリカゾウを含む野生動物の保護に役立てられています。

カバ革(ヒポポタマス)

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ゾウ革にも似た、こちらも希少性の高いカバ革(ヒポポタマス)。
実はヒポポタマスという革は、ゾウ革(エレファント)の輸入が制限された際に、見た目が似ていることから代用品として一時的に流通したことがあったようです。
強度もエレファント同様耐久性に優れ、水にも比較的強いという特徴があります。
エレファント革は現在でもワシントン条約によって厳しく規制されており、ごくわずかな量のみ許可のもと流通しておりますが、このヒポポタマスも現在はワシントン条約付属書II類に属し、輸出国の政府が発行する許可証が必要となっており輸入が厳しく制限されています。
そのため入手するにはエレファント同様非常にハードルが高く、また知名度が低いということもあり実際はエレファント以上に革が流通しておらず入手が極めて困難な革となっています。
ヒポポタマスの皮膚はなめらかで、厚い上皮と真皮、及び極めて薄い表層(角質層)から構成されていますが、革素材はその表層を取り除いて鞣したものですので表面はヌバック・スエード状で柔らかな起毛感があるのが特徴です。

鮫革(シャークスキン)

「ヨシキリザメ」の最高品質の革。

細かな帯状の凸凹(シボ)が特徴的で、溝が深いものがあったり、逆に溝が浅く細かな物だったり、指紋のように1点1点模様が全て異なり、同じものはありません。
革質は、筋繊維が密なため、しなやかで丈夫な性質を持ち、傷がつきにくという性質を持ちます。繊維が密な為、多少水には強いです。
ザラザラとした質感からツヤのある質感へと使っていくうちに変わっていく経年変化を楽しめる点も大きな魅力です。

様々な革雪駄をご紹介してまいりましたが、辻屋本店では、まだまだ他にも突然入荷する珍しい革の雪駄もございます。
その時かぎりの一点物なんてものもございますので、時々オンラインショップもチェックしてみてくださいね♪

辻屋本店公式YouTube

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