「畳表(たたみおもて)雪駄」の材料を知っていますか?

古くからある雪駄と聞いて思い浮かぶのは、こんな天然の材料を編んだ雪駄ではないでしょうか?

雪駄の表(おもて)は”畳表(たたみおもて)”と呼ばれますが、素材は何かご存知でしょうか。
部屋に敷く畳のイグサではありません。

正解は竹の皮。
竹の皮といっても、ちょっと特別な”稈鞘(かんしょう)”というもので作られます。

“稈鞘”とは、元々は、筍を包んでいた皮の部分です。
皆さんにイメージして頂くには、食品などを包む斑点がある筍の皮がわかりやすいでしょうか。
その筍が竹へと成長して伸びていく時に、伸びた竹の節から自然と落ちる皮。これを拾い集めます。

但し、雪駄に使われる竹皮には斑点がありません。
ここに稀少性があるのです。
実はこの原料となる竹、真竹の種類ではあるのですが、突然変異で現れた非常に斑点が少ない竹なのです。
そして、驚くべき事にこの材料が今の日本ではほぼ枯渇しているのです。

時代を遡れば、日本で作られる雪駄の材料ですから、この竹が自生する産地はかつてあったそうです。限られた地域である事に変わりはありませんが。

ただ、これが無くなった…何故か?

これには、竹の生態と一つの仮説があります。
竹は地下茎で繋がり、その辺り一帯に一つのコロニーを形成して植生します。
そして、竹の寿命は種類によって違いますが、真竹で約100〜120年と最近の研究でわかってきています。
この寿命が尽きた時、その一帯の竹は一斉に枯れます。

竹は枯れる前に一度きり花を咲かすそうですが、開花しても種子が実るものもあれば実らないものもあるそうで、まだまだその生態は謎が多いそうです。

つまり、仮説ですが、この特異な竹皮の産地ではその寿命が尽きる時、その種(しゅ)の保存をする事が出来ずに途絶えてしまった。
若しくは、斑点が無いというその特異な要素を遺伝せずに代変わりした、という事があったのでしょう。

こうして、日本での竹皮採取の産地は無くなっていきました。
ただ、突然変異で発生するものなので、もしかしたら今も人知れぬ場所にはあるのかも知れませんが…(注1)

現在、竹皮表の雪駄を編んでいるメーカーは全国で2つだけ。
産地ではありません。2社のみでどちらも家族経営です。

そして、雪駄に使える竹皮を求めて職人は世界中を探し、集めてきているそうです。
採取できたとしても量はとても少ないし、今取れている場所でもいつ枯れるのかわからない。
本当に苦労して、さらに新しい産地となる竹を探し続けているそうです。

採取量に関してですが”稈鞘”は、先ほど述べた通り、落ちてきたものを拾い集めるのですが、実はここにも一つのネックがあります。
竹は筍から春先など暖かくなってきた時期にほぼ一斉に成長します。
つまり、”稈鞘”が落ちる時期も一斉です。
その落ちたものを雨や微生物による分解などを避けて状態良く拾い集められる期間は1年のうちに1〜2週間のみだそうです。
更に、いくら特異な竹とは言え、筍の外に近い部分は斑点が入り易く、内に近い部分が竹へと成長した”稈鞘”のみを選り集めなければならないのです。

竹皮表雪駄の材料がいかに稀少であるか、おわかりいただけると思います。
さらにこの先には、この材料が雪駄に仕上がるまでの工程がまだまだあるわけです。

こんな材料で作られている事を知って頂いた上で、実際の表に是非触れてみてください。

因みに、女性物でも竹皮を使った草履がございます。
カジュアルからフォーマルまで鼻緒の選択によって万能に使われるお草履です。

注釈1…現在(2020年)、国内にも自生している竹林があるそうですが、管理者が居らず、有効利用する道を模索しているそうです。ただ、コスト面等も含めてなかなか難しい点があるようです。

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