『お友達から爽やかな藍染めが届いたので、鼻緒に仕立てちゃいました』

挿げ職人の小林です。
そろそろ、初夏の声も聞こえる中、目に爽やかな正藍染の鼻緒が入荷いたしました。

東京の山の水で染める「正藍染」

東京の西の端っこ、日の出町
東京の山の水で藍を建て、東京の山の水で洗い、
ゆっくりと時間をかけて染める本建て藍染工房『正藍染 つつみ』の藍染めで仕立てました。⁡

「本建て正藍染」

日本古来の「本建て正藍染」という技法で、化学薬品を使わず布を染めあげる藍染工房『正藍染つつみ』
藍染には化学薬品が使われていないと思う人も少なくないですが、藍染と一括りに言われているものには、藍の発色や、管理が安易となることから薬品が使われることがあります。
「本藍染め」という呼称の中にもこういった化学薬品を使ったものも多くあります。

「本建て正藍染」は、藍草の葉を堆肥のように発酵させた原料(すくも)を、堅木の木灰からとった灰汁のみで再発酵し、藍液を建てる。通称「地獄建て」と呼ばれるほど難しい技法
染めの工程にも手間が掛かります。煮て布の不純物を取り除いたのち(精錬)、灰汁を布に染み込ませる下処理を施して布全体に藍液が染み渡るよう指先で何度も揉み込み染めます。丁寧に洗い、灰汁をきれいに流し、日光に当てることで、さらに残った灰汁を浮かせます。
染めの工程を最低4回は繰り返し、濃い色を出す場合は7~8回も繰り返すそうです。

また「本建て正藍染」の藍液は、自然からの恵みのみを使っているため、役目を終えた廃液も自然へと返せるところも大きな点です。

藍染工房「正藍染つつみ」

こちらの 『正藍染つつみ』 、実は小林の昔のお仕事仲間が始めた工房です。
今から20年も前に地下に潜り、戦場のような忙しさの中、共に働いた同志(デパ地下です)。
お互い、当時は今のような環境や生業に身を置くとは夢にも思っていませんでしたが、、

かたや、浅草で履物の世界で職人となり歩むなか、度々、お便りを聞いているうちに、
いつの間にやら、東京の端っこ、お山の麓へとご家族で移住し、生活を始め、
いつの間にやら、藍染めをはじめ、爪をあおく染めていたのです。

正直、驚きもあり、うらやましさもある話でしたが、
何度か伺う機会もあり、その環境と共に生きる業いとして”藍染”を選んだことは必然なのかな?
と、僕は思いました。

同じものを作る職人として、どういった思いがあるのか興味もあり、いくつか質問をさせていただきました。
とても興味深い考え方も感じましたので、是非ご一読いただければ幸いです。

⁡ー藍染めを始めたきっかけは?

子どもたちの通う幼児園で藍染のTシャツを染めるのをお手伝いさせて頂き、染めることの楽しさ、藍の美しさに魅了されてしまいました。

ー水に恵まれた環境が後押しする部分もあったかと思いますが、そもそも環境を変えて移住をしたきっかけは?

マンションで暮らす日々。
周りに気を使いながらの子育てがとても苦しくなり、もっと伸び伸びとした環境で暮らしたいと思うようになりました。
主人が山仕事をしているので、思い切って職場の近くへ。水が流れ、鳥が鳴き、緑に囲まれて。思いっきり走りまわって、大声で歌って。
心がホッとしたのをおぼえています。

ー日々の生活の中に藍染めを取り入れることで、得られる喜びや良いと思う点は?

肌に心地よく、目にも爽やかな藍染めに囲まれていると気持ちが和らぎます。
なぜなら、藍染めには空や海の青に通じる、自然が醸し出す優しい青があると思うからです。それは微生物の発酵によってできるもの。
発酵と腐敗、それは相対するもの。

発酵は食品だけでなく、藍染めもまた、暮らしを良くしてくれる「発酵製品」だと思っています。

ー作り手として関わるようになった「藍染め」に対して持つイメージや思いは、始める前と後で変わったことはありますか?

染められるようになるまでに、とても沢山の工程がある事も知らずに飛び込んだ世界。

作品を目にする度に染めた人の思いや、染められた生地や糸がその姿になるまでのストーリーに胸が熱くなります。
また、正藍染は灰汁(あく)と蒅(すくも)だけで建てて染める藍染です。
昔と変わらない方法で今、こうして染めていると、同じ青色を昔の人々も見ていたのかなと思います。

シンプルな方法だからこそとても難しく、なかなか思うようにいきません。
水のように透明で輝いた水色から、紫を混ぜたような紺色まで表現出来る正藍染。
これから何が見えてくるのか、とても楽しみです。

ーこれから先、藍染めを通してどういった活動をしていきたいと思いますか?

⁡「藍染は色落ちが激しい」という声をよく耳にします。しかし、何度も何度も染めては水で洗い天日で焼いて仕上げる正藍染はそのイメージとは異なり、色落ちがとてもしづらいです。
手間と時間を沢山かけて産まれた正藍染めの強さと美しさを多くの方に知って頂けたら嬉しいです。

また、大切にしていたものを染め直して更に長く着られるようにしたり、お気に入りの色に染めて楽しむお手伝いをさせて頂いたり。

微生物の声をききながら山の中で、できるだけ自然に負担をかけないように。
山の恵みの豊かなお水をつかって、出来ることは小さくとも、心に残る藍染屋として地域に根付いていけたらと考えています。

いかがでしたでしょうか?正藍染。
その目に入る美しさはもちろんですが、環境や生活に心地よいその背景を知ると、
よりその力強い魅力を感じるのではないでしょうか?

是非、みなさまも生活の一つに取り入れてみてくださいね。
様々な台との組み合わせで、お承りできます。
ぜひ、店頭、DMにてお問い合わせお待ちしております。

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