これが「ベタガネ」です

四代目店主 富田里枝です。
修理にお持ち込みされた草履が今では見られないような目の詰んだ畳表(たたみおもて)だったので、写真を撮らせていただきました。
これ、竹皮を編んだ表だと思ったのですが、棕櫚表(しゅろおもて)でした。
この記事を読んでくださった雪駄研究の専門家からご連絡をいただき判明しました!
ご指摘、ありがとうございます。

稀少になった畳表

棕櫚は椰子の一種。
竹皮表に使う皮白竹(かしろだけ)は何百年周期で枯死してしまう習性があるそうで、日本で1917年頃に竹皮の素材が採取できなくなり、代替素材として棕櫚が使われたらしいです。
南国の椰子ではなく日本に自生する種で、今でも和歌山県に棕櫚が自生する地域があります。
1920年代に棕櫚表はかなり作られていたようですが、その後、竹皮が復活して棕櫚表は下火になり、昭和60年頃に作られなくなったと聞きました。

こちらの表は履きこんであるので良い艶も出ていました。目が詰んでいるからこその、この艶。
目があまいと汚れが入り込んで、艶が出る前に黒ずんでしまいます。
稀少な棕櫚表!

雪駄チャラチャラ?

そしてさらに珍しいのが踵。
「ベタガネ」といいます。
昔、男性用の雪駄ではたまに見ましたが、女性用の草履に打ち付けられているのは、かなり珍しい。
金属なので減りませんがたいそう滑ります。
「雪駄チャラチャラ」はこのベタガネの音。ここから「チャラチャラした男」などの言葉が生まれたとか。
お客様のご要望で滑りにくいゴムの踵に交換しました。

実は当初「鼻緒を交換して欲しい」とおっしゃっていたのですが、しまいこまれて年月が経った表は、乾燥しているので鼻緒を抜く際に切れてしまう恐れがあります。
コーディネート次第で素敵に履きこなせますよ、と申し上げてもうしばらくこの鼻緒で履いていただき、少し潤いが戻ってきたら、別の鼻緒に替えてみましょうということになりました。

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