【履物laboはきものがかり】第6回 開催報告

ーー桐下駄の価値と見方ーー

■桐素材について

・桐はシソ目、キリ科、キリ属の落葉広葉樹である
・昔から箪笥や下駄、お琴などに用いられてきた
・温度変化に応じて湿気を吸放出する機能が高く、湿度を一定に保つことが出来る
・熱伝導率が低い

■桐材の産地

福島県の会津桐や新潟の山間部など、寒い地方で育った桐は成長が遅く、その為年輪が細かく、良質とされている。

■桐下駄の製造工程

・桐材を丸太の状態で乾燥させる。
・下駄用の長さに切断し「墨掛け」して「木取り」する。
・桐の渋やアクを抜くため、風雪にさらして「輪積み」で半年間自然乾燥させる。
・桐下駄の価値は美しい柾目で決まるので、丸太からどのように下駄の台を取るかが重要。

■桐下駄の値打ち

・桐材を幹の中心に向かって切り取ると、年輪はまっすぐに現れ、これを「柾目」と呼ぶ。
・柾目が等間隔で真っ直ぐに通っているほど値打ちがあり、価格も高くなる。
・丸太から、縦に切り出し、下駄の表を合わせた形で加工すると、一足の下駄は同じ柾目になり、これを「合目」と呼び、特に贅沢で高級な桐下駄になる。

■桐下駄の仕上げ

まず台の表に砥粉(とのこ)を塗り、「いぼた蝋」という天然の蝋を塗り、かるかやという植物を束ねて作った「うずくり」という道具で磨いて木目を浮き立たせる。
最後に「たま」と呼ぶ陶器でできた道具で磨いて光沢を出します。

ーー研究員の考察ーー

◆下駄の木目はデザインとしか捉えていなかったが、今回、価値との関係を学ぶことができ、また「うずくり」や「たま」など、これまで耳にしたことのない道具、その扱い方法等を知ることができました。

◆まさに「桐」という自然界の生き物と職人の技の、両方の力がマッチした賜物なのだな、と思った。桐下駄、すごい!

◆日本人の生活で靴を履く人が増える一方で、下駄を履く人が少なくなってゆくと、安価な素材の下駄が淘汰され、高級な桐下駄が残ったという経緯は、興味深かったです。
以前から気になっていた桐下駄の「柾目」についてや、良質な桐下駄を製造することの難しさについても、今回のお話で改めて理解が深まったと思う。

◆下駄と言えば桐材、となんとなく思っていましたが、歴史や材料の切り出しから商品になるまでの工程を知って驚きました。
日本人と桐は気候風土に合う本当に密接な絆があったのですね。

◆桐箪笥は湿度変化に応じて湿気を吸放出するため、湿度を一定に保てることを知り、改めて日本の気候に適しているのだと感じた。
桐下駄の仕上げに木目を浮き立たせる工程を見せてもらい、ビフォーアフターを比較して木目が本当に美しくなり驚いた。

ーー研究員の感想(1年を振り返って)ーー

◆履物について知りたいと思っていたけど、どこで誰に聞いたらいいのかわからないでいたので、履物laboに参加できたことがとてもとても嬉しかったです。
期待以上の、想定外レベルの和の履物の奥深さとマニアックな内容で、ほんとにすばらしい時間でした。
今後、履物について周りの方へ多少でも正しい情報を伝えられるようにしていきたいです。
毎回ランチの時間も楽しく、浅草を歩いていろいろな発見があったり、昔からある良いものを知るきっかけになりました。

◆元々履物が好きだったこともあり、全6回、様々なことを教えていただき、多くの知識を得ることができた。
また座学に加えて、学んだものをお店で実際に手に取ることができるなど実践も多く、今後、購入する際に大きな助けとなること間違いなし。

◆着物が好きになって着るようになってから約12年ほどですが、履物について全くわかっていませんでした。
履物専門店で、エキスパートの女将さん、そして私の足を見て挿げてくださる職人さんに相談をして、自分のニーズにピッタリ合った履き物を選ぶ、というのが一番好ましいということがよくわかりました。

◆私は知りたい事があるとまずはネットでひととおりの検索をしますが、和装履物のことは検索しても出てこなかったり、よくわからない事も多くて困っていました。
今回履物Laboに参加させていただいたことで正しい知識を実物を見ながら得る事ができて大変有意義でした。
鼻緒で足が痛くなるという方には、ぜひ専門店で職人さんにちゃんと挿げてもらって!!と、まずはそこから伝えてゆきたいです。

◆先ずは企画アイデアと運営実行の富田里枝さん、石渡静子さんに感謝しています。
和装における重要ポイントは履き物にあり!と今なら断言出来るくらいの変化が起きました。
考えてみれば洋服でもそうですがせっかくの和装、履物では更にセンスアップ出来そうです。
最終日のコーデ、SNSで履き物までのコーデを褒められた事は何よりも嬉しい変化でした。
まだ入り口に立ったばかり、これを機会に更に工夫を重ねていきたいと思っています。
そして御一緒出来た一期生の皆さんそれぞれの個性と熱心さに大きく触発されました。

◆1年間、辻屋女将の里枝さんや職人の小林さんにたくさんの事を教わり、全てが新しい学びでした。
この知識をもって、履物を買うお店の選び方から知ることができました。
何でも揃っているデパートで買うのもいいけど、これだけの差がある事を学べ、末永く使い続ける『コツ』として、これからも専門店で履物を楽しみたいと思います。

*履物labo はきものがかりとは?
着物を愛する皆さんと共に、隔月で和装履物を研究。公募でご参加頂いた研究員の皆様と共に現在の履物事情、そして履物の未来について意見交換する場です。

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