浅草の老舗割烹『一直』

四代目店主 富田里枝です。
浅草寺の北側、地元では「観音裏」と呼ばれる一帯は芸者さんのいる花街。
最近は料亭や待合の廃業が続きマンションばかり増えていますが代々続く老舗も何軒か頑張っています。

「一直(いちなお)」さんもそのひとつ。140年以上続く名店です。
現当主は7代目の江原正剛さん。

明治11年創業時は「花屋敷」の隣で「奥山の一直(いっちょく)」として料理屋を始めました。
その頃、浅草奥山は文人墨客が訪れる風流な所で「一直」もお庭のある数寄屋造りの大きなお店でした。

大正から昭和にかけて文化の発信地だった浅草。
各界の著名人が通う「一直」は浅草の花柳界を代表する高級料亭で、当時は料理人が40人くらい、その他の従業員も含めると100人も抱える大所帯で、1日に400人ものお客様があったとか。

戦争が始まると「料理屋は不要不急の商売である」と商いをやめざるを得なくなり、数寄屋造りの建物も火除け地を作るため取り壊されてしまいます。

戦後、同じ場所で規模を縮小して再開。
現当主のお父上、江原仁さんは86歳にして現役です。若い頃、関西での修行のほかにオーストリアの日本大使館に勤務されたユニークな経験も。

すき焼き専門店「ちんや」の店主、住吉史彦さんのご著書『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』(晶文社刊)には、江原さんがカラヤン全盛期のウィーンで仕事をされていたエピソードや、江戸の料理と関西の料理の違いなどが書かれています。

「一直」さんは2009年に建て直されて、現在はマンションの1階部分になりカウンター割烹形式で本格的な日本料理を味わえるお店となっています。

そして評判のランチが1日10食限定の「鯛茶漬け」。

以前よりうちのお客さまから聞き、いただいてみたいと思っておりましたが、評判どおりのおいしさでした。
ぷりっぷりの鯛を半分はお刺身で、残り半分になると女将さんがお茶漬けに盛り付けてくれます。

薬味とあっさりした出汁、胡麻だれのクリーミーな味で毎日でも食べたくなるお味です。

「割烹家 一直」
http://ichinao.com/

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