【履物豆知識/男性】雪駄とは何か徹底解説!! 歴史や構造、良い雪駄の見方までご紹介

意外に知らない、雪駄とは?

雪駄とは、和装履物の極みといっていいでしょう。
靴が足の機能を強化する発想で作られているのに比べ、素足できれいな床や畳の上を歩くことが基本の日本の文化では、履物は「足の強化」ではなく自分だけの「床や畳」なのです。

雪駄の構造

竹皮で編んだ表に、牛革の裏革を縫い付けた草履を<雪駄(せった)>といいます。
雪駄の構造は、表(おもて)・裏革・鼻緒・芯・踵(かかと)からできています。

雪駄の期限…千利休が考案した?

雪駄の起源については、いくつかの説があります。
例として雪駄について書かれた文献を挙げてみます。

『堺鑑』(1684年 衣笠一閑著)

雪踏ノ始ハ昔日尻切ト云物ヲ用千利休作意トシテ雪ノ比茶湯ノ露地入ノ為ニ草履ノ裡ニ牛革ヲ付サセ用ル也即雪ヲ踏ト云義ヲ取テ名付タリト云傳也

『大和事始』(同年 貝原好古著)

むかしハ尻切と云ものを用ゆ。天正年中。泉州堺邑茶人千利休と云もの作意を加へ。雪の此茶会の時露地入のために。草履のうらに牛革を付させ用ける也。雪をふむと云義にて。雪踏と名付たりとかや。

『南方禄』(1593年 南坊宗啓が千利休の言説をおとに編集)

露地入の作法に関連して千利休が従来の下駄ではなくて草履を履くことを勧めている。打ち水がされ常に湿潤の状態にあるべき露地には必然的に裏に革を当てた草履。

『日本履物変遷史』(1958年 今西卯蔵著)

…ついては利休のはじめたという説には、もとより確たる根拠も認められない…

『ものと人間の文化史・はきもの』(1973年 潮田鉄雄著)

関西で作られた茶席にはく履物のセキダ(席駄)が、関東に伝わりセッタと訛り、雪駄・雪踏の文字を当てたようである。

 「表」の種類…南部表と野崎表

竹皮で編んだ表(おもて)は、編み方の細かさ、美しさに比例して価値が決まります。
現在では、昔ながらの作り方で編んでいる<南部表>と、南部表より目が粗く工程を簡略化した<野崎表>があります。

「南部表」

江戸時代、南部藩の下級武士が内職仕事で作っていた雪駄表の質が良いということで、
雪駄表といえば代名詞のように呼ばれています。現在、その地方で作られてはいません。

南部表

編み目がそろっていて細かく、踵の部分にヘソがあります。

南部表ーつま先
南部表ーへそ

底の象皮に切り込みを入れ、縫い目が見えないように表と縫い合わせています。そのため象皮を交換することが可能です。

南部表ー手縫い底

「野崎表」

名称の由来ははっきりわかりません。南部表にはちょっと手が届かないという方には、少々お手頃価格な野崎表をおすすめしています。色は3種類の中から選べます。

<茶竹>

素材の竹皮の色を生かした自然な風合い。鼻緒しだいで、ふだん履き、お洒落履きから礼装まで対応できます。

野崎表ー茶竹

<白竹>

清々しい白さが特徴。鼻緒しだいで、ふだん履き、お洒落履きから礼装まで対応できます。

野崎表ー白竹

<からす表>

黒っぽく色を染めた表。ふだん履きからお洒落履きに。礼装には向きません。足跡がつきづらいので素足で履く季節に重宝です。細い鼻緒を挿げて、つっかけるように粋に履くスタイルがおすすめ。

野崎表ーからす

象皮と表は接着してありますので、象皮の交換は不可能です。

野崎表ー接着底

重ね芯の種類

表と裏革の間に挟まれている「重ね芯」にはいくつか種類があります。

「後一(あといち)」

後1

後二(あとに)」

後2

「革芯(かわじん)」

革芯ー横
革芯ー後ろ

「通し芯」+「半月」の枚数によって高さのある重ね草履になります。
1の3 2の5 3の7…

2の5
3の7

底の素材

「象皮」

素材は牛革ですが、象の皮のように固いからでしょうか、この名前がついています。昔は仕上げにガラスで磨いたそうです。

象皮

「クローム革底」

象皮ほど重くないので、二の五、三の七など重ねの草履に使用することが多い。女性用の革草履にも使われます。

クローム底

踵(かかと)について

雪駄の踵は「馬蹄型」と「テクター型」があります。
江戸時代は「ベタガネ」「チャラガネ」と呼ばれた金属製の尻鉄(しりがね)が打ち込まれていましたが、現在では製造されていません。

(実は辻屋本店には少し前まで本物の「チャラガネ」の在庫があったのですが、珍しくなったこのチャラガネを好事家に欲しいといわれると「いいよ」と先代がどんどんあげてしまったとか・・・。という訳でいまは残念ながら辻屋本店にもありません)

ちなみに、江戸時代の奉行所の同心はこの「チャラガネ」の雪駄を履いて市中を闊歩し「雪駄チャラチャラ」は同心の代名詞だったとか。同心じゃなくても、江戸時代の道の悪さを考えれば、普通に働く人は歯のある下駄が一番便利だったでしょうし、柔らかい履物ならわらじでしょう。白足袋に雪駄でチャラチャラ音をさせて歩いているのは余裕のある人だったわけ、それを揶揄した言い方が「雪駄チャラチャラ」でしょう。いまでも使う「チャラい」のルーツですね〜。

「馬蹄型」

名称のとおり馬蹄の形をしています。もっとも一般的な踵です。

馬蹄型

「テクター型」

金属部分が多いので減りが遅くなりますが、滑りやすくなるので注意してください。

テクター型

最後に、こちらのサイトもものすごく参考になります。

雪駄塾

これほど雪駄について愛情を持って詳しく研究しているウェブサイトは他に知りません。

日本が誇る履物、雪駄の素晴らしさがもっと多くの皆さまに伝えられるよう、私たちも頑張ろうと思います。

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