一人だって、ひっそりと愉快に

辻屋本店 店主 富田里枝です。
平野恵理子さんの新著『五十八歳、山の家で猫と暮らす』を読みました。

恵理子さんのご両親が40年前に買っていらい、何度も訪れ、家族や友人と過ごした八ヶ岳の麓の家。
お母さまが亡くなった後、悲しみで何も手に付かず、一時避難のつもりで暮らし始めたところ、二年半経った今も離れがたくなってしまったそうです。

山荘で一年を通して暮らすのは初めてだったから、
思っていなかったことが起こり、想像以上に不便だったり。

夏は次々に現れる虫たち。
冬は水道管も凍ってしまうほどの寒さ。

ひとり奮闘しながらも、ひとつひとつ乗り越えて、
山の家での暮らしを作っていく日々を綴っています。

春の匂い、潤い。
自分も染まっていくような夏の緑。
お盆明けの風に感じる秋のはじまり。
冬の朝、天国にいるような陽の光。

「ここに一人でいると、なにからも自由な、すっかり解放された感覚と、
内側へ深く入っていく自分の両方を強く感じた。
孤独という言葉にはどこか負の印象があるが、いい孤独、
心地よい孤独もあるのだ。
一人だって、ひっそりと愉快に過ごせることはある。」

ベランダの餌箱にやってくるヤマガラやシジュウカラ。
心優しいご近所さん、土地に代々住む地元の人々。
庭造りをしながら思い出す大好きなお母さんの思い出。

日常の中のきらきらした一コマをイラストに、
さりげないけれど大切にしたい小さな物語を文章に。

ひとりでいても、ひとりぼっちではない。
この本は、そんな幸せな時間の過ごし方を教えてくれます。

新型コロナウィルスの感染防止のため、
今は人と会ったり集まることができなくなりました。
うちに閉じこもっているのが辛い。
外に出かけられずつまらない。
人との接触が絶たれて寂しく思うのは当然。
でも逆に、静かに自分だけの時間を熟成させるチャンスかもしれません。

一方でテレワークになり、家族とすごく時間が増えた方にとっては
良いことも鬱陶しいこともあるでしょう。

コロナ禍で、人との接し方、時間の使い方などあらためて考えてしまいます。

平野恵理子さんは元々、うちのお客さまだったのですが、
ある雑誌の取材でお話ししてから個展にうかがうようになり、
お互い「クレイジーケンバンド」のファンであることを知っていらい、
さらに仲良くさせていただいています。
一昨年『浅草でそろう江戸着物』という本で、私の文章に素敵なイラストを
たくさん描いてくださいました。

昨夏、八ヶ岳ののギャラリーで開催された個展へ遊びに行き、
その後、山の家にもお邪魔しました。

いつものように穏やかな笑顔の恵理子さんと久々にゆっくりお話しして、
好きなモノに囲まれ、猫といっしょに暮らしている日々をちょっとだけ覗かせていただきました。

今年の夏も遊びに行って、こんどは泊りがけでハイキングもしたい、
そう思っていたけれど無理かなぁ。

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