辻屋本店履物labo はきものがかり事務局のしずこです。
今回は待ちに待ったマイトデザインワークスさんで草木染のワークショップ!
いつもとは違い「汚れても良い服装」で集合した研究員の皆様。
どんなものが出来上がるのか?期待とわくわくが止まらない様子です。

-- MAITO植物染色研究所 小室さんより座学 --
実際に生地を染める前に、座学で草木染についておさらいと、今回染める色と工程を学びます。

■え?!虫も?意外だった草木染の種類
草木染の種類には草、花、樹木、根、実以外に土や石、虫なども含まれ、自然界にある色素を用いて色を染めることを草木染めと呼ぶ。
それらの天然色素のうち、水に溶ける色素を染料、水に溶けない色素を顔料と言う。
■シルクだけじゃない。テンセル、キュプラもOK!
草木染めは天然繊維でないと染めることが出来ない。天然繊維とは以下の2種。
シルク、ウール、アンゴラ、モヘヤ、カシミヤ、毛皮などの動物繊維
主成分:タンパク質 濃い色に染めやすい
綿、麻、和紙糸、竹、レーヨン、テンセル、キュプラなどの植物繊維
主成分:セルロース 濃い色に染めにくい。
レーヨンが木材パルプなどの再生繊維 という事は知っていたのですが、テンセル、キュプラも再生繊維なんですね。勉強不足でした。
テンセルはユーカリなどの木材パルプを原料とした再生繊維。
キュプラは綿花の種子の周りにある短い産毛を銅アンモニア溶液に溶かして再生した再生繊維 ですので、草木染で染めることが出来るそうです。
どんな色に染めるの?
正絹の半衿2枚と鼻緒2足分を各々染めます。
事前の話し合いで研究員が決めた色は以下の2色。
・紫根染め 植物名:紫
日本三大色素の1つ。高価で憧れの色とされてきた紫。着物好きにはお馴染みの色ですね。6-7月に白い花を咲かせる多年草で、5月か10月に採取し天日干した根を紫根と呼びます。
・槐染め 植物名:槐(エンジュ)
浅草神社の御神木。夏の暑い盛りに花が咲き始め、染色には蕾を使います。
鮮やかな黄色を染める貴重な染料。




■染める前の下処理
①精錬
生地や糸の汚れを落とすための重要な工程です。
②先媒染
80度のお湯にミョウバンを溶かし入れ媒染液を作る。
お鍋に入った生地をみんなで代わりばんこにクルクルかき混ぜます。



■いよいよ染色
それぞれ色や染め方の希望を先生に伝え、作っていただいた液体に生地を入れて染めていきます。
始めは戸惑い気味だった研究員の皆さんですが、工程が解ってくると次はこうかな?こうしたいけどどうしたら良いか?など、試行錯誤する様子も楽し気です。
もっと濃くしたい。
グレイッシュにしたい。
グラデーションにしたい。
真ん中を濃くしたい。
むらくも絞りにしたい。
このようにちょっと難しそうかな?と感じるものでも、どんどん挑戦させてもらえますので、夢中で工程を進めるうちに、あっという間に時間が過ぎていきます。







お洒落で探求心旺盛な研究員の皆様が時間ギリギリまで果敢に挑戦し続けた結果、実に個性あふれるそれぞれ美しい色の半衿と鼻緒生地ができあがりました!

-- 研究員の考察 --
hirokoさん
6月に草木染めの歴史や日本の伝統色について学び、今回は実際に自分たちの手で染めるということで、とても楽しみにしていました。
今回使った染料は、紫根(しこん)と槐(えんじゅ)。
特に印象的だったのは、紫根のお話です。
紫根は植物の根から採れる染料ですが、紫色の色素があるのは根の外側の部分だけ。
しかも、植物が育てば必ず色素ができるわけではなく、土壌や環境などの条件が関係しているそうです。
古くから紫色は高貴な色とされ、限られた人しか身につけられなかったという歴史も、こうした染料の希少性を知ることで、より深く理解できた気がします。
また、草木染めは植物から色を取り出して布を浸せば染まるという、単純なものではないことも学びました。
染料と顔料の違い、植物繊維と動物繊維の性質、温度や酸性・アルカリ性の影響、そして色を定着させるための媒染という工程。
特に驚いたのは、同じ植物から取り出した染料でも、媒染に使う金属の種類によって色が変わるということです。
さらに、染める温度や酸性・アルカリ性の違いによっても色合いが変化する。
自然の色を扱うということは、植物だけでなく、さまざまな条件と向き合うことなのだと感じました。
そして、実際の染色では、布をゆっくり動かしながら、染液がまんべんなく行き渡るようにすることも大切だと教えていただきました。
紫根染めでは、均一に染めるのではなく、あえて濃淡をつけることに挑戦しました。
仕上がった布は、深みのある紫色の中に淡い藤色のような部分がところどころ現れ、色が重なり合うような柔らかな表情に。
くっきりとした模様ではなく、濃い紫から淡い紫へと自然につながる色の変化が、なんとも美しく感じられました。
一方、槐で染めた布は、明るく鮮やかな黄色に仕上がりました。
こちらは紫とは対照的に、すっきりとした色合い。
生地に織り込まれた花模様が光の加減で浮かび上がり、黄色一色の中にも織りの表情が感じられます。
並べてみると、落ち着いた紫と明るい黄色の対比も美しく、どちらも植物から生まれた色なのだと思うと、改めて自然の持つ色彩の豊かさに驚かされました。
また、ほかの参加者の作品も、同じ染料を使っているのに、淡い紫から深い紫、明るい黄色から落ち着いた黄色、カーキまで、実にさまざま。
媒染や染め方によってこれほど表情が変わることも、実際に目にしたからこその発見でした。
思い描いた色を目指して工夫する楽しさと、染め上がるまでどんな表情になるかわからない面白さ。
自然の色を生かしながら、自分らしい表現も楽しめることが、草木染めの魅力なのだと感じました。
一つひとつの工程にはきちんと意味があり、昔の人たちが試行錯誤を重ねながら、こうした技術を育んできたのだと思うと、日本の染色文化の奥深さを改めて感じます。
私自身、お香づくりでも天然の植物を扱っています。
同じ素材でも、使う部位や組み合わせ、扱い方によって香りが変わることがありますが、草木染めにも通じるものがあると感じました。
自然の恵みを生かしながら、知恵と技術を積み重ねてきた日本のものづくり。
今回は、知識として学ぶだけでなく、実際に手を動かして体験できたことで、その魅力をより身近に感じることができました。
履物をきっかけに、染色や日本の伝統文化にまで学びが広がっていく「はきものがかり」。
今回も本当に貴重な時間をありがとうございました!
chieさん
草木染めのワークショップへ。
植物から色をいただき、布を染める。
そんな自然の恵みを感じる時間を想像していましたが、実際はまるで化学の授業!
天然染料と合成染料の違い、繊維の種類、酸性・アルカリ性、pHのことまで。
美しい色の背景には、こんなにも科学的な仕組みがあるのだと驚きました。
同じ植物から生まれる色も、条件によって表情が変わる。
自然の不思議と、人の知恵や工夫が重なって、あの美しい色が生まれるのですね。
日本の伝統や手仕事には、まだまだ知らない奥深さがある。
学ぶことの楽しさを、あらためて感じた一日でした。
染め上がった布の色を眺めながら、自然が生み出す色の美しさにうっとり。
知ることで、もっと好きになる。
そんな学びを、体験させていただきました。
mariさん
汚れても良い服装でという事で、着込み過ぎたかと思われるTシャツにジーンズという‥テンション下がり気味の服装で待ち合わせに向かったワタクシ‥。良いのです!今回はいよいよ半衿と鼻緒を染める回なのです!
さぁ頑張ろーっと向かったMAITO植物染色研究所。
扉を開けるとこの前とは違う香り。初めて嗅ぐ香り。藍の香りでした。
ここで藍についてのレクチャーが始まり、そして草木染めのお話へ。
草木染めは天然色素を用いて色を染めます。
自然界にある草花、樹木、土、石、虫など色がついている物が原料となります。
水に溶ける色素が染料、溶けない色素が顔料。それぞれ染め方が違います。
私たちは染料を使って染めます。
草木染めは天然繊維しか染めることができないそうです。植物か動物かで染色温度や難易度が違いますが、皆さん、レーヨン、テンセル、セルロースって天然繊維だとご存じでしたか?一見するとカタカナで文字に誤魔化され私は化学繊維だと思っておりました‥。
いよいよ染めていきます!
槐をどんな黄色にしようか。テーブルに並べられたサンプルから気になったのが蜜柑のようなオレンジ色。
べらぼうが放送されてた頃、辻屋さんの下駄で半分朱色で半分黒の下駄があったような‥。あれ欲しかったのよね。
今回黒ではないが、それっぽい雰囲気ができないかなー。
紫からオレンジに変わるのが夜に限りなく近い夕暮れって感じも好きなのよね。
ということで、衿を縦半分に区切ってオレンジ色と濃いめの紫で一枚作ることにしました。
あ、半衿も鼻緒も二足分作れるのですよ。
用意してくださった辻屋さんには本当に感謝しかございません!お揃いになるように少し色目が違いますが、鼻緒も紫とオレンジを使って一足分染めました。
もう一枚の半衿は、紫根を薄めに染めて灰桜か薄いラベンダーのような色に。
歌舞伎とか時代劇で御新造さんの半衿でよく見かける色。
アンティーク着物に合わせやすいかな。春先にも良さそうです。
二つ目の鼻緒は、色がつくかつかないかの薄い紫に。単純に薄い色の鼻緒を持っていないから。
研究員の皆さま、本当に色選びもセンスも凄く良いのですよ。
染め上がった布をハンガーに掛けていくのですが、全員の布が陽の光に輝いているのは圧巻でした!
さて、今回は帰宅して布を乾かすまでが体験です。
乾いたら色が少し落ち着いて薄くなります。
私の半衿1枚目のオレンジと紫は、シャーベットオレンジとラベンダー色になりました。
2枚目のラベンダー色は、灰桜色に。どちらもとても気に入っています。
12月の第5回目は研究員が今回染めた半衿をして、染め上がった鼻緒のお披露目となります。
どんな風に仕上がっているか、楽しみです!すげてもらう履物は‥うふふ、ワタクシ決めちゃっております。取置き済みです。
次回のレポートでそのお話も。
今回もお読みくださいましてありがとうございました。
risaさん
マイトデザインワークスさんの、草木染ワークショップに参加させて頂きました。
事前に研究員の皆様で染める色を決めて下さり(私は欠席でした。すみません…。)紫と黄色の2色に決定!
どちらも大好きな色なので、染める前からとても楽しみでした。
様々な工程があり、時間をかけて抽出された染料を、今回は紫根で紫色に、黄色はなんと浅草神社の御神木でもある槐(えんじゅ)の花蕾から抽出された黄色で染め上げました!
と言っても、金属や塩などを使って色合いを変化させたりする媒染方法によって、みんな同じ植物から染めているのに2色だけど仕上がりが全然違って個性豊か。
自分で染めると色の濃さや、色の入れ方が自由に出来るのがとても楽しかったです。
また、普段は何気なく目にしている植物などが、染料や顔料となり様々な色を生み出す事や、同じ植物でも染色方法や素材によって色合いが変わるという事がとても興味深かったです。
今回の体験を通して、身近な自然界の色に興味が深まり、別の色にもチャレンジしてみたいなと思いました。
自然の恵みを生かしたものづくりは、お着物と沢山の共通点があるのでとても魅力を感じます。貴重な機会をありがとうございました。
miharuさん
蔵前にあるマイトデザインワークスさんでの草木染ワークショップ。
会場はおしゃれなキッチンのようでもあり、化学室のようでもある、なんだかワクワクする空間でした。
今回染めるのは鼻緒と半襟。色は「紫根(紫)」と「槐樹(黄)」の2色です。
槐樹は浅草神社のご神木ということで、浅草にある辻屋本店さんの企画にぴったりの色だなと思いました。
染める前には、今回使う染料や草木染の種類、生地の種類、pHへの耐性、草木染の方法など、知っておきたい基礎知識を教えていただきました。
難しそうな内容でしたが、とても分かりやすく、話に引き込まれて、これから染めるということを忘れてしまうくらい楽しいお話でした。
いよいよ染色の作業へ。最初は単色の濃淡で染めるのだと思っていましたが、2色を使ったグラデーションや、媒染液を変えて同じ染料でも色合いを変えることができると聞き、楽しみがさらに広がりました。
紫根染めでは濃淡のグラデーション、槐樹染めでは媒染液を変え、黄色とカーキのグラデーションに挑戦しました。
生地の浸し方や染める時間など、ちょっとした違いでも仕上がりが変わるため、狙い通りの色に染め上げるには高い技術が必要であることを実感しました。
どのように染め進めるかを試行錯誤しながら集中して作業していると、時間はあっという間に過ぎていきました。
染め上がった生地が干されている様子も印象的でした。同じ染料を使っているのに、それぞれに個性があり、とても素敵な光景でした。
染め上がった半襟は、そのまま持ち帰ることができました。
手持ちのどの着物に合わせようか、帰宅中から今もずっと楽しんでいます。
鼻緒はこれから加工していただくため、引き渡しは後日。
どんな仕上がりになってくるのか、今からワクワクしています。
どの下駄の台に合わせようか、あれこれ妄想する時間も楽しみのひとつになりそうです。
今回のワークショップで特に印象に残ったのは、自然界にある色素を用いて染めることを「草木染め」と呼ぶということ。
使われる色材には、水に溶ける染料と水に溶けない顔料があり、植物由来の色素だけでなく、石や土など、自然界にあるさまざまな色材が使われることを知りました。
また、染められる布にも条件があり、天然繊維が対象となることや、レーヨンやキュプラも再生繊維として染色に使えることを知り、素材についても新たな発見がありました。
また、染料を布に定着させるために行う「媒染」も興味深かったです。
アルミや銅、鉄など、使う金属によって同じ染料でも色合いが変わる。
自然の植物から色を取り出すだけでなく、素材や液の性質によって色を調整していく様子は、まさに「化学」だなという印象を受けました。
そして、色の名前やその由来、同じ紫や黄色でもさまざまな色が存在することを知り、色の奥深さにも改めて気づくことができました。
今回のワークショップを通して、草木染の楽しさだけでなく、その背景にある知識や技術にも触れることができました。これから草木染の品に出会ったり、実際に手にしたりするときには、今までとは違った視点や価値観で楽しめるのではないかと思います。
akkoさん
前回、染色についてレクチャーしていただいた台東区蔵前のマイトデザインワークスさんで、今回は実際に絹の布を染めるワークショップに参加。
染めるのは、着物の半衿用の布2枚と、下駄の鼻緒用の布2足分。
使用する染料は、みんなで相談して決めた紫根(しこん)の紫と槐(えんじゅ)の黄色です。
紫根染めはよく聞きますが、槐という木は今回初めて知りました。
槐の黄色は、かつて武功を立てた武士や身分の高い人の衣装に用いられ、「武士の誉」と讃えられたのだそうです。
また、浅草神社の御神木が槐であることから、今回のはきものがかりを主宰する辻屋さんとの「浅草つながり」が決め手になりました。
一方、紫根は根の表皮に含まれるシコニンという色素を利用します。紫色の色素が育つ土地は限られ、古くから貴重な染料とされてきたそうです。
そのため紫根の取れる土地は、京都の紫野や福岡の筑紫野など、「紫」のつく地名が多いとのこと。学生時代に京都の紫野に住んでいた私にとっては意外な発見でした。
染液の作り方もそれぞれ異なります。
紫根はエタノールで表皮から色素を抽出し、槐は米粒ほどの小さな花蕾をザル1杯分、約1時間煮出して黄色の染液を作ります。
まずは鼻緒用の布から染色を開始。
布が重ならないように染液の中でゆっくり動かし、繊維に均一に色を浸透させていきます。
1足分は黄色と紫が半々のツートンカラーにすることに。
紫根は染色後のph処理によって色が変化し、酸性では赤みのある京紫、アルカリ性では青みのある江戸紫になります。
私は青みのある江戸紫が好みなので、アルカリ処理で仕上げました。
鮮やかな黄色と紫の組み合わせで、少しファンキーな鼻緒が出来上がるのが楽しみです。
もう1足分は、黄色に染めた後、鉄媒染を施すことで、渋みのあるカーキ色に仕上げました。
そして、今回特にこだわったのが半衿の叢雲しぼりです。
半衿は顔に近く、顔映りを左右する大切なアイテムのため、色選びはかなり重要です。
私はあえて色ムラを作る叢雲(むらくも)しぼりに挑戦したく、その場でアドバイスをいただきながら、布を指先でくしゅくしゅと寄せ、お借りした輪ゴムとネットで固定しました。
1枚目は黄色に染めてから鉄媒染で淡いカーキ色に。2枚目は紫根で薄い灰紫色に染めました。
ゴムとネットを外して布を広げた瞬間、思い描いていたような自然なムラ模様が現れ、思わず感激!
どちらも淡く繊細な色合いに仕上がり、大満足の出来栄えでした。
今回、何より面白かったのは、同じ染料を使っていても、染める時間や媒染の種類、工程の違いによって、仕上がりの色が大きく変わること。
参加者7人が同じ黄色と紫を使いながら、出来上がった作品はまさに7人7様でした!
植物が持つ色を布に移し取り、身にまとうものへと変えていく。なんて楽しいのだろう!とワクワクしました。
日本では、約2,000年前の弥生時代にはすでに、自然界の植物や生き物を利用した染色が行われていたといわれます。
その長い歴史の中には、到底数えきれないほどの試行錯誤や発見があったのでしょう。
今回の体験を通じて、先人たちの知恵と技術、そして自然が生み出す色彩の奥深さをあらためて感じました。
道端で見かける草花や木々にも、「これで染めたら何色になるのだろう?」と想像するようになりました。
草木染めの魅力を味わい、もっと知りたい、もっと染めてみたいと思える貴重な体験でした。

-- ワークショップを終えて --
はきものがかりでずっとやってみたかった染色体験。
この度マイトデザインワークスさんの多大なご協力により実現することができました。
研究員の「ああしたい!」「こうしたい!」を、一つひとつ丁寧に叶えて下さり、大変感謝いたします。
次回は鼻緒が仕立て上がる予定です。どんな台に挿げるのか?まだまだお楽しみは続きますよ♪
はきものがかり事務局 しずこ







