【第三期 履物laboはきものがかり】第3回 開催報告

ーー 店主より座学「着物の格に合わせた草履選び」 ーー

 ■ 草履に使われている素材

 牛革・・・ほとんどが輸入。革全体から草履に使える部分は少ない。
 合成皮革・・・革より劣るわけではない。ビニール製とは異なる。
 帯地、帆布ほか布生地
 畳表・・・竹の皮(履物の場合、畳と言ってもイグサではない)
 夏向きの植物素材・・・パナマ、麻、籐など

 ■ 礼装、準礼装(留袖・訪問着・色無地)

 金銀の帯地
 金銀の牛革・合成皮革
 金銀彩の入ったデザイン
 白の牛革・合成皮革
 畳表+白または礼装用の鼻緒

 ■ 盛装(訪問着・付下げ)

白や淡い色の牛革・合成皮革
金銀彩の入ったデザイン
螺鈿等のデザインが入ったデザイン

 ■ 洒落着(付下げ・小紋・紬など)

 ■ ネット上などで見られる間違った情報

×フォーマルは高さのある草履 → ○高い低いと格は関係ない
×フォーマルは光沢のあるエナメル→ ○エナメル、マット加工、どちらでもよい
×フォーマルは段数の多い台→ ○段数と格は関係ない

 ■ 失敗しない草履選び

・素材と価格のバランスで選ぶ。使用頻度や目的によって選び方は人それぞれです。
・正しいサイズを選ぶ
・白または淡い色の無地草履は万能

 ■ 辻屋本店ならではのポイント

・ご購入いただいた履物の鼻緒の調整は何度でも無料
・別の鼻緒に挿げ替えも可能
・サイズ、台の高さ、革の色などフルオーダーができる

ーー 何色がいい?草木染の色を決める ーー

ーー 研究員の考察 ーー

hirokoさん

草履のフォーマルにまつわるお話しがテーマでした。
私自身、「高さがあるほどフォーマル」「段数が多いほどフォーマル」というのを、当たり前のように思い込んでいたのですが、それがまったく根拠のない情報だったと知り、本当に驚きました。
ネットや人気のYouTuber、着付け教室の先生からも、そうした誤った情報が広まってしまっている現状があると伺い、専門店だからこそ知っている「本当のこと」を、きちんと伝えていくことの大切さを改めて感じました。

フォーマルの基準は高さや段数、エナメルかどうかは関係がないということ。
素材と色こそが格を決めるという、シンプルながら明確な基準を知ることができました。
また、草履一足の裏側にある職人さんの手間にも驚かされました。
牛皮は一枚の革から使える部分が限られていて、無駄になる部分が多い素材。
輸入に頼っているため価格も上がり続けていて、染めや底付けができる職人さんも年々減っている。
大手メーカーの廃業をきっかけに、業界全体が影響を受けてしまうというお話からも、一足の草履がどれだけ多くの手と時間を経て私たちの元に届いているのかを実感しました。
草履を選ぶ際は、着物を着る頻度や暮らし方に合わせて、どんな一足を選ぶかを決めていいというお話にもとても納得しました。
知らないまま履いていたら気づけなかったことばかりで、今回も本当に学びの多い時間でした。

mariさん

あらゆるシーンでほぼ下駄を選ぶ私ですが、(というか日常で礼装準礼装を着る機会がほぼない)、流石にそれも江戸小紋まで。
付け下げ・色無地より上を着る時はお草履に自然と手が伸びます。
私の草履は真っ白、一番無難なものです。これは、本当に気持ちが楽。だって品がある。どの方に対しても失礼に当たらない。結構どの着物にも合う。だから履いていて間違いがない。

今回のテーマ・着物の格に合わせた草履では私のお草履だと付け下げか軽めの訪問着くらいまででしょう。
その上になると、金・銀そして憧れの畳表に正絹錦の鼻緒とのこと。
実際に表面が滑らかな美しい南部表の草履をもってきてくださり、直接手に取ってお話を伺いました。一同ため息。
お草履屋さんならではの、正しい知識も得る事ができました。
まず、草履の高さと格は関係ない!これ、本当に重要です。
考えてみれば、80代オーバーの方に高さのある草履は危険。人に寄り添った常識が広がってほしいですね。
フォーマルは光沢のあるエナメル一択ではない!エナメル、マット加工どちらでもオッケーだそうです。
ご自身の着物に合わせて光沢かマットか履物を決める、普通の感覚ですよね。

草履の段数と格は関係ない!
力説してくださる里枝さんに頼もしさを感じたと同時に、着物にしても履物にしても誰が広めたのかわからない情報に振り回されて、結果着ない履かない選択になってしまうのは勿体無いお話だと思いました。
ではどうやって草履を選ぶのか。いちばん簡単で間違いないのは、履物専門店でフィッティングしてもらう事でしょう。

ライフスタイルや頻度、履くシーンを伝えて一緒に考えてもらう。たくさんあるお品物の中からお気に入りを選ぶ楽しい時間を、私の拙い文章を読んでくださっている皆さまにも是非体験していただきたいと思います。
辻屋本店の里枝さんから、「革は長持ちするので、履く機会が少ない人ほど革を選んでほしい。合成皮革は劣化していくので頻度が多い方がどんどん履いてほしい。」とアドバイスもいただきましたよ。
さて、今回のもう一つのお題、色決め。何になったでしょうか?メンバーみんなで決めた色、数パターン。10月が楽しみです!

chieさん

これまで草履の格で、畳表のものが上位であることや佐賀錦のような帯地の草履がフォーマルでは望ましく、革の淡い色がその下に続くというイメージでいたのですが、「フォーマルなら高さがあるもの」「フォーマルなら段数の多い台」といった声もよく聞くのでルールについて明確に教えていただいてスッキリしました。
例えば、草履の台の高さと着物の格は必ずしも関係がなく、エナメルかマット加工かについても、どちらかが格上ということではありません。
また、台の段数によって格が決まるわけでもありません。

草履選びで大切なのは、単純に「格」だけで判断するのではなく、着物とのバランス、素材や色、使用する場面、そして履く人のライフスタイルや使用頻度などを総合的に考えることだと学びました。
草履には、牛革、合成皮革、帯地、帆布などの布、生地、畳表、また夏向きの植物素材など、さまざまな素材が使われています。
素材によって、それぞれ特徴や扱いやすさ、価格、耐久性などが異なります。
特に印象に残ったのは、「本革だから良い、合皮だから格が低い」という単純な考え方ではないということです。

素材そのものの優劣だけではなく、その人がどのように草履を使うのか、どのくらいの頻度で履くのか、手入れのしやすさを重視するのかなどによって、適した素材は変わるのだと分かりました。

今回の講習を受けて、「誰が、どこへ、どのくらいの頻度で履くのか」まで考えて選ぶことが、本当にその人に合った草履選びにつながるのだと思いました。
今後、着付けや着物のコーディネートを提案する際にも、単に「この着物にはこの草履」と決めつけるのではなく、着る人の好みや用途、ライフスタイルまで伺いながら提案できるようになりたいと思いました。
また、インターネットには草履についてもさまざまな情報がありますが、今回の講習を通して、「フォーマルだから○○」「○○だから格が高い」といった情報を鵜呑みにせず、専門家から正しい知識を学ぶことの大切さも改めて実感しました。

akikoさん

私も以前、呉服屋さんで「2段より3段の草履の方が格が高い」と聞いたことがあります。
しかし本来、格を決める要素として最も大切なのは、「高さ」よりも「素材」なのだそうです。
素材とは、鼻緒と台の部分になにが使われているかを指します。

今回、初めて詳しく知ったのが「畳表」についてでした。
畳表(たたみおもて)とは呼ばれるものの、編み込まれている素材は、畳のい草ではなく、竹の皮。
しかも、筍から竹に成長する時期に自然に剥がれ落ちる皮から、斑点がなく、キレイな色のものだけを選別し、拾い集めたものに限ります。
とても貴重なうえ、国内では竹の生態が変化し、畳表に使える竹皮がほとんど手に入らなくなっているそうです。
世界中から、なんとかこの竹皮を探し求め、ようやく入手したものを、加工するのがまたまた大変な作業です。
カビや虫除けのために燻蒸し、さらに水に浸し、適度な柔らかさまでふやかしてから、均一に繊維を裂きます。そして、色にムラが出ないよう、裂いた繊維を選別し、ようやく編む工程に進みます。
ぎっしりと目を詰めて丁寧に編み込み、乾燥させ、さらに圧縮をかけて、ようやくあの重量感のある滑らかな畳表の台面が出来上がるのだそうです。(そして次の職人によって草履に仕上げられる)
現在では畳表づくりの職人が全国にわずか数人しか残っておらず、しかも材料も入手困難。
作るのに大変な手間暇がかかり、昔から相当身分の高い人しか履けないものだったということです。

だからこそ、第一礼装にはこの畳表が一番に挙がるものなのだと、今回、心底納得したのでした。
その他にも興味深かったのは、本革と合成皮革の違いについて。合皮だから本革より格下、とは限らないということです。
合皮であっても、染めや草履にする工程は、本革に施すのとほとんど同じで、職人の手によるのだそう。(これは知りませんでした!)
本革と合皮で見分けもつきにくいので、そこに格の差は生じません。
ただし、本革に比べるとやや安価な合皮は、耐久年数が短く、劣化するとボロボロと剥がれが起きて、使えなくなります。
そのため、履く頻度が高い人なら合皮もアリ。でも、滅多に履かないで、次に履く機会まで何年もしまっておく人であれば、本革の方がおすすめ、だそうです。
なぜなら、合皮は何年も空気に触れないとさらに早く劣化が進み、いざ履くときに用をなさない可能性が高いため、ということでした。


今回の学びを受けて。
単純に「草履の高さが高いものが格が高い」としたら、私も含めた背の高い人にとっては困りものです。フォーマルのときに格を守るため、さらに大きく盛らなくてはならなくなってしまいます。
それにどう見てもカジュアル向けな素材でも、高さが高ければフォーマルで良いとしたら、着るものとのバランスが取れず、やはりおかしいでしょう。
なので、こうした間違った認識は、正しく周知していく必要がある、と私も思います。
祝う誰かのため、心を込めて装うことの多いフォーマルでは、なにより大切なのは素材。高さは履く人の個性と好みで選べるのが当然だと、私たち「着物を広める人」から伝えていこうと思います。
見た目は素朴な素材でできている畳表の履き物が、なぜ最も格が高いとされ、これほど高価なのかについて、あらためて今回詳しく知ることができました。
私もまだ手に入る今のうちに、一足は畳表の草履を迎えて、大切に履き育てていきたいと思います。

miharuさん

今回特に印象に残ったのは、「ネット上などで見られる間違った情報」についてです。
例えば、「フォーマルには高さのある草履、光沢のあるエナメル、段数の多い台がよい」という情報があります。
しかし今回の講座では、草履の高さそのものが格を決めるわけではなく、段数と格も直接関係するものではないこと、また、エナメルやマット加工のどちらでもよく、色やデザイン、鼻緒の素材など、さまざまな要素によって格が変わることを学びました。
まずネットで検索し、その情報を参考にすることが多い現代だからこそ、実際とは異なる情報が広まっていることに驚くと同時に、「知らないまま間違った情報を信じてしまうことは怖いことだ」と感じました。
わからないことを自分で調べることはもちろん大切です。

しかし、今回の講座を通して、何を調べるかだけではなく、「どこで調べるのか」「誰に相談するのか」ということも、確かな知識を得るためには重要なのだと改めて感じました。
和装でいうと、「履物のことは履物屋さん、着物のことは着物屋さんに聞く」。
専門家から直接教えていただくことで、ネット上の情報だけでは分からないことや、その背景まで知ることができます。
特に、畳表の草履についてのお話がとても興味深く、畳表に使われる竹皮がどのような工程を経て作られるのか、また、畳表には「南部表」と「野崎表」の2種類があることなど、普段は知ることのできない素材の背景について学ぶことができました。
今回のワークショップは、草履の選び方を学ぶだけでなく、正しい知識を得るための情報の集め方についても考える、とても有意義な機会になりました。

mimiさん

着物一年生の私にとって、草履の素材や格についての講義はたいへん有意義な学びの時間となりました。
特に印象に残ったのは、牛革の草履のお話。
マット加工とエナメル加工があり、実際に見せていただきました。
これまで牛革=革靴のイメージだったため、目の前のエナメル草履が牛皮から作られているなんて、思いもしませんでした。
さらに、たまにしか履かない礼装用なら長期保管に強い牛皮、頻繁に履くなら劣化しにくくコスパの良い合成皮革が向いているという話は、まさに目から鱗でした。

また、畳表が竹の皮でできており、鼻緒しだいで格の高い履物であること、草履の高さは「格」とは関係がないことも初めて知りました。
ネットで見かける「フォーマルには三段草履」という情報を当たり前に信じていたので、これまたびっくり。
また、大変お恥ずかしいお話ですが、初心者の私は畳表とわらじの区別がついていませんでした。
ところが、畳表にフォーマル用の鼻緒をあわせるととても粋で素敵なのでした。
週1回は着物を着たい私には合皮のお草履が実用的だと分かった一方、やっぱり年々作られなくなっている牛皮の草履も欲しい!
はきものがかりの任期中に、草履か下駄を新調したいと思っていますが、まだ決めきれません。
今後もまた学びを深めて自分の価値観が変化していくのも楽しみだったりします♪

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