和装人インタビュー

第47回 浅草老舗うなぎ専門店  初小川 女将 河合一恵 さん

初小川の女将さんとは「浅草槐の会」という浅草の商店主の集まる勉強会で時々ご一緒します。
いつもすてきな着物姿で、浅草ならではのしゃきっとした着こなしに加えて、どことなく舞台衣裳に通じるような華やかさがあり、印象的なコーディネイトなのです。
いつか、着物の話をしてもらいたいなーと思っていて、猛暑のさなか体力を付けるために鰻を食べに行った機会にインタビューをお願いした次第です。

四代目 富田里枝

 

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河合 一恵(かわい かずえ)

1961年 浅草雷門生まれ。鰻専門店「初小川」女将。

 

 

 

一日中、お稽古場にいれば楽しいわけ。

 

四代目 富田里枝: 初小川さんは明治40年創業ということで、浅草でも指折りの老舗ですが、女将さんは家業を継いでずっとこのお仕事をされているのですか?

河合一恵: 若い頃は、松葉屋(※註)さんで修行してました。

四代目 富田里枝: 吉原の松葉屋さんですか?

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河合一恵: そう、花魁ショーってやってたでしょ。私は子どもの頃から、踊りやお囃子を習っていて、そのお稽古で知っていた松葉屋のお母さんに「来てみない?」と誘われたの。それで高校生くらいから松葉屋に行ってました。

四代目 富田里枝: お囃子って、あやめ連ですか?

河合一恵: そう、あやめ連です。

四代目 富田里枝: あやめ連といったら、三社祭ではなくてはならないお囃子ですが、そんなに歴史があるとは知らなかった。女将さんは、お囃子はなんでもできるんですか?

河合一恵: 全部できます。笛、締め太鼓、大胴つまり大太鼓のことね、それから鉦(よすけ)。私は今、いちばん笛に力を入れてます。

四代目 富田里枝: 鉦って、コンチキチンっていう?

河合一恵: そうそう。笛も太鼓も、みんな鉦にリズムを合わせるのよ。

四代目 富田里枝: でもそんな小さな頃から今でもずっとやっていて、飽きないんですか?

河合一恵: 飽きないわねぇ。今だって、これっていう完璧なものはできないから。

四代目 富田里枝: どれくらいの頻度でお稽古をしているのですか?

河合一恵: 今は月に3回。先生に来てもらってます。笛だけ月2回。それとまた別に個人で先生のところでお稽古しています。

四代目 富田里枝: 忙しいですねぇ。

河合一恵: 小唄のお稽古が月4回。お三味線もやってます。昔、長唄もやってましたが小唄とは間が違うんです。日舞は6歳の6月6日から。踊りが一番長いわね。

四代目 富田里枝: 踊りも!?流派はどちらですか?

河合一恵: 藤間流。師範もとりました。藤間一紫穂(ふじまかずしほ)といいます。

四代目 富田里枝: たいてい続かないものじゃないですか、習い事って。子どもの頃から始めたのが、ほとんど全部続いているって、すごいですよね。

河合一恵: わりかし、しつこいのかしらね。

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四代目 富田里枝: 私も6つの時に日舞を習わされたんですけど、すぐやめちゃいました。それにしても踊り、お囃子、長唄と、忙しい子どもでしたね。

河合一恵: 勉強なんかぜんぜんしなかった(笑)。

四代目 富田里枝: お友達と遊ぶ時間なんてあったんですか?

河合一恵: お稽古に行けばお友達がいるから。昔は同い年くらいの子どもがいっぱいいたの。お三味線の先生が出稽古に来てくれて、踊りの待ち時間に長唄習ったり。一日中、お稽古場にいれば楽しいわけ。

四代目 富田里枝: 話は戻りますけど、松葉屋さんでの毎日はどうだったんですか?

河合一恵: それはもう、楽しいことばっかりだった。毎日おさらいみたいなものよね。お化粧してもらって、きれいな着物と鬘つけて、1日中踊っていられるわけ。芸者衆に踊りを教えてもらえて。

四代目 富田里枝: それでお金もいただけて。

河合一恵: そう!アハハハ!!

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四代目 富田里枝: 1日何ステージあったのですか?

河合一恵: いちばん多い時は12回とか。

 

お祭りが終わったらすぐ、
来年のお祭りの着物はどうしようかって。
四代目 富田里枝: えーっ!12回!?

河合一恵: 民謡さんと私たちと芸者衆と交互にね。あの頃、はとバスコースがずいぶん来たから。ところがいつの間にか、ゲイバーとかニューハーフショーとかが、はとバスに組み込まれて松葉屋には来なくなって。

四代目 富田里枝: いちばん隆盛だったのはいつ頃ですか?

河合一恵: 30年前位かな。昭和60年頃が絶好調だったんじゃないかしら。

四代目 富田里枝: 映画のセットの中にいるみたいな感じだったんでしょうね。芸者衆というのは、浅草の見番から?

河合一恵: いえいえ、吉原の芸者衆。

四代目 富田里枝: あ、そうか。以前、最後の吉原芸者、みな子姐さんの「華より花」という本を読んだことがあります。「吉原の芸者は器量じゃなくて芸で売る」って、とてもプライドが高かったと書いてありました。

河合一恵: そう、歌代姐さんという方がとってもいい芸者さんで、私も憧れましたよ。松葉屋さんでお世話になったのは、よかったなと思ってます。

四代目 富田里枝: 子どもの頃から踊りやお囃子を習って、松葉屋さんでの環境もあって、女将さんの着物の着こなし、そこからなんですね!真似できないなー。

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河合一恵: そんなこと、ないですよ。浴衣の下にワンピース着てたり。店を閉めたらすぐに脱いで片付けができるようにね。そんな感じよ。

四代目 富田里枝: 失礼な言い方かもしれませんが、あまりに自然で頑張ってないというか。

河合一恵: でもね、私今でも着付け教室に行ってるのよ。

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四代目 富田里枝: えーっ、なんで!?

河合一恵: なんでと思うでしょ。でもね、新しい発見があるのよ。

四代目 富田里枝: ほんとに習ったりするのが好きなんですね。それにしても全然必要ないと思うけど。

河合一恵: 勉強になるの。私、帯なんか、自分で切って付け帯にしちゃってるから、ちゃんとした締め方を習っとくと助かることあるの。

四代目 富田里枝: 今日の浴衣は豆絞り、涼しげでかっこいいですねぇ! 着物を選ぶときにポイントとかあるんですか?

河合一恵: 見ていいなと思ったら買っちゃう(笑)。

四代目 富田里枝: 着物に関してはご家族の影響もあります?

河合一恵: 子どもの頃は与えられたものを着てたけど、だんだん親とは趣味が違ってきてね。やっぱり、松葉屋にいた経験は大きかったわね。芸者衆の着こなしなんか、派手ではないけれど、さすがだったから。毎月違う着物や帯でね。

四代目 富田里枝: 浅草ならではの好みってあるんでしょうか?

河合一恵: あるわね。目に着くのは網代の柄。こないだも網代の柄の無双を買ったし。無双は好きなんだけど、着る時期が短いからね。

四代目 富田里枝: 贅沢な着物ですよね。6月と9月だけですもんね。

河合一恵: 三社祭の時のあやめ連のお揃いなんかは、私がデザインしてるの。

四代目 富田里枝: え、そうなんですか! どうやってデザインを思いつくんですか?

河合一恵: 松葉屋の芸者衆がこういうの着ていたなーって、記憶をたどってね。着物は自分でデザインを考えて、型起こして染めてもらったりするのが多いです。お祭りが終わったらすぐ、来年のお祭りの着物はどうしようかって。

四代目 富田里枝: 浅草は年中行事が多いから、その度に着る着物を考えるのって楽しいですよね。

河合一恵: そうね。除夜の鐘をつくときは、鐘と龍を刺繍した帯をしめて。お酉様には、熊手とおかめさんの象牙のかんざし。

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四代目 富田里枝: 新年会の時のかんざしも可愛かったー! 女将さん、帯もいろいろ持ってますよね。いつも楽しみです。中村座の芝居小屋を描いた帯、素敵ですよねぇ!

河合一恵: 歌舞伎にちなんだ柄も好きです。道成寺の大道具を描いたのも持ってます。

四代目 富田里枝: 踊りや長唄を知ってると、歌舞伎を観ても楽しいでしょうねぇ。

河合一恵: 自然と体が動いちゃう。こないだの平成中村座の「三社祭」とか。「め組の喧嘩」観た?よかったわよー!3回観て、最後には舞台に出ちゃった。

四代目 富田里枝: あ、三社祭の神輿が舞台に上がって、浅草の地元の人達みんなで担いだんですよね!

河合一恵: それで血圧が220に上がっちゃって。アハハハ!

四代目 富田里枝: 健康に悪いですねー(笑)。いちばん好きな歌舞伎役者さんは?

河合一恵: 片岡亀蔵。幼馴染でね、松葉屋に行ってた頃、彼もちょこちょこ手伝いに来てたのね。それがあんな立派な役者になって嬉しいわ。亀蔵の亡くなったお父さん、よくうちに鰻食べに来てくれてたの。

四代目 富田里枝: 初小川さんは長くやってらっしゃるから、お客様も何代も続けて来てくださるのでは?

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河合一恵: そうですね。おじいさんに連れてきてもらったって、若い人が来てくれたりね。世代交代しても食べに来てくださる。

四代目 富田里枝: 鰻って、江戸っ子が好む食べ物であったらしいですが、やっぱり昔から特別な、庶民の御馳走だったみたいですね。

河合一恵: 一般の家庭じゃできない料理ですよね。トンカツとか天ぷらは作れるけど。

四代目 富田里枝: たしかに鰻は無理ですね。浅草には鰻屋さんが何軒かありますが、一番お店の特徴が出るのはタレの味でしょうか。初小川さんの特徴というと?

河合一恵: うちはね、辛口です。甘味はみりんだけ。あとは焼き方ね。備長炭で焼いてますが、一匹ごとに火加減や蒸し時間を調整しています。

四代目 富田里枝: 稚魚がとれないって聞きますけど、実際大丈夫なんですか?なくならない?

河合一恵: なくならないですよ。スーパーで売っているような安価な鰻は数が少なくなるんでしょうけど。逆に最近は話題になって、じゃあ鰻食べようかって来てくれる方も少なくないです。

四代目 富田里枝: 考えてみると、1種類の魚だけの専門料理って、鰻とドジョウくらいですよね?

河合一恵: スッポンとかフグは?

四代目 富田里枝: あー、でもそれこそ庶民にはなかなか手が届かないし。ちょっと頑張れば食べに行けるご馳走といえばやっぱり鰻です。
初小川さんみたいな老舗の、おいしいお店があって、浅草の人は幸せです。また食べに来ますね!今日はどうもありがとうございました。

2012年8月1日 浅草「初小川」にて。

 「初小川」
  住所:東京都台東区雷門2-8-4
  電話:03-3844-2723
  不定休

 

<註>松葉屋:新吉原最後の引手茶屋。後に料亭に。地域観光の目玉として、吉原芸者衆による花魁道中・花魁ショーを行っていたが、1998年惜しくも廃業。

 

連日の猛暑で体力も落ちてくると、鰻が食べたくなります。お店の前を通るといい~匂い!
でも初小川さんは、予約しないと入れないことが多いので要注意ですよ^^
昔は下町の商家の娘はお稽古事をいろいろさせられたものです。
どれも続かなかった私とは違って、今でも芸事に精進している女将さん。老舗の看板をしょいつつも、
日々お囃子や小唄、踊りなど楽しんでいる姿は、なんだか憧れます。

四代目 富田 里枝



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